北九州国際映画祭2024(Kitakyushu International film Festival 2024)

2024年11月1日(金)〜3日(日)J:COM北九州芸術劇場中劇場、小倉昭和館ほか

北九州国際映画祭2024

市民参加型企画
国際短編部門:学生セレクション 結果と講評

プサン国際短編映画祭からセレクションされた5作品を鑑賞・ディスカッションを経て、優秀作品を選び表彰を行うプログラム。
北九州市内の高校・大学生から11名の申込がありました。
10月12日、11月3日にミーティングを行い、最優秀賞を選定しました。
また、12月14日に振り返りミーティングを行いました。発表当日の参加者は9名でした。

学生プログラマーの評価基準

選定の際、テーマ性、内容、客観的視点、技術面を総合的に評価して、最優秀賞を選びました。

最優秀賞『夏休み (Summer Vacation)

写真提供:Busan International Short Film Festival

学生プログラマーの講評

 『夏休み』は、新しい母との気まずさなど、誰もが体験したことがあるであろう繊細な人間関係を丁寧に表現しており、そういう点で多くの観客の共感を呼びやすく、様々な家族に当てはめて考えることができる物語になっている。また技術面において、ロングショットの描写が多く、新しい母と娘の気まずさを分かりやすく表現していた。

キム・ミンソン(kim Minseong)監督の受賞コメント

「心より感謝申し上げます。日本を含め海外で質疑応答することは初めての体験で、とても大変でしたがとても貴重な時間を過ごすことができました。これからも頑張って映画制作を続けていくの、劇場で私の名前を見つけていただけると幸いです。現在長編を準備しているので、完成したらまた北九州国際映画祭で上映してほしいと思います。」

特別賞『マイナス・ワン (MINUS ONE)

写真提供:Busan International Short Film Festival

学生プログラマーの講評

 この映画の最後、主人公が「母の味だ」と言ったご飯が、実は自身の偏見から、追い出そうとしていた地下1階(マイナス・ワン)に住む移民の家族がつくったものだ、というシーンがあります。日常の中に潜む自身の先入観がはがれ、異質な存在であったものを自分事のようにとらえだそうとする、その瞬間が印象的に描かれています。
 近年インバウンドだけでなく、日本へ働きに来る海外の人が増えています。この北九州国際映画祭のテーマにもある「映画によるエコシステム」「映画を介した人と人との繋がり」を考えた時に、この映画全体を通して違った文化を持つ人々とどのように共に暮らしていくのか、そのことを考えさせる映画だと思い、この映画を特別賞に選出しました。

『私の母の物語 (My Mother's Story)

写真提供:Busan International Short Film Festival

学生プログラマーの講評

 『私の母の物語』は、タイトルからも想像できるように、漫画家である「私」の母の10代から20代の 頃が描かれています。母は、1927年に朝鮮半島北部の村で生まれ、文化的にも政治的にも主体的には生きられなかった様子が、シリアスながらも、コミカルなタッチのアニメーションで表現されます。 
 母の人生の一時期を通して描かれるのは、その当時を生きた人々が実際に体験し、見聞きしたことでもあり、個人的なことを語ることがそのまま時代を語ることでもあったことが腑に落ちます。
 この映画では食卓を舞台にして、母の人生の出来事が表現されています。また物語の最初と最後に鳩が登場します。それは平和を象徴するだけでなく、朝鮮半島の北と南といった空間だけでなく、今と昔といった時間をも横断して、母の物語はまた祖母の物語でもあったことを思い起こさせます。

『DIVE』

写真提供:Busan International Short Film Festival

学生プログラマーの講評

 『DIVE』はヨーロッパの映画を象徴するような作品で、セリフ数が少なく、2人の主人公の表情や音楽によって成り立っている所が他の作品と比べて印象的かつ違う部分だと考えます。
 ヨーロッパの第1次と第2次世界大戦の経験から戦争が身近なものとして描かれ、最初はラブストーリーかと思わせつつ、しかし、隠された背景として第3次世界大戦の始まりを表しており、日常が非日常に移る瞬間が見事に表現されています。

『楽園の約束 (I Promise You Paradise)

写真提供:Busan International Short Film Festival

学生プログラマーの講評

 『楽園の約束』は、繊細な表情が完璧に演技されており、主人公のつらさや心苦しさがささってくる映画だと感じました。また難民というテーマにおくさず、まっすぐに切り込んでおり、とても価値のある作品だと思いました。しかし、審査員同士の話し合いの結果、内容の伝わりずらさや技術面で今一つという風にまとまりました。
 ただ、30分という短かい時間の中で本当は泣き叫びたいけれどもそんなことをしても現実は変わらないという主人公の思考と冷たい現実をリアルに感じられるすばらしい映画であることは間違いないと思います。

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